センキューフォーウォッチン攷

0.はじめに

 本稿では、一部おにぎりゃーの間で見られる「センキューフォーウォッチン」という文化についての考察を行う。なお、本文はC100怪文書合同に向けて調査・執筆し、2023年9月に加筆・修正したものであるから、調査結果には古い内容が含まれることに留意されたい。

 

1.おにぎりゃーとは

 おにぎりゃーとは猫又おかゆのファンネームで、囚人服に顔がおにぎりという特徴的な姿をしており、ポノノ先生によってその肉体を与えられた。

こちらの配信で本人公認となった…はず。

ちなみに20代男性が多い。

2.センキューフォーウォッチンとは

 今回の記事では「センキューフォーウォッチン」を扱うのだが、Twitterで「センキューフォーウォッチン」という文字列を見かけたことはあるだろうか。

↓こういうやつ

 もし見たことが無い人は、「センキューフォーウォッチン」で検索をかけてみて欲しい。きっと「センキューフォーウォッチン」がほぼ同時刻に、かつ大量に呟かれている異常な光景を目にすることだと思う。また、謎にいいね数が多いのも目に付くことだろう。 これらのツイートは、おにぎりゃーが猫又おかゆの配信やプレミア公開を視聴し終えたときに呟いているものである。配信でのネタをきっかけに自然発生的に始まったものであるため、特にこれといったルールなどもない(はず)。この事象について、便宜的に「センキューフォーウォッチン文化」と呼称することにする。

 以下ではなるべく知らない人にもわかるような説明を試みたが、先述のように何となく始まって何となく続いている文化である(と思っている)ため言語化が難しい。とにかく百聞は一見に如かずということで、Twitterを覗いてみて欲しい。

3.センキューフォーウォッチン文化の特質

 センキューフォーウォッチン文化はどこに独自性があるのか。単に配信終わりの挨拶が決まっているというだけではない。私は寡聞にしてホロライブ以外のVTuberに詳しくないのだが、ホロライブ内だけでも各タレントごとにおつ○○といったお決まりの挨拶がある。ぱっと思いついたものを挙げるだけでも、

 

戌神ころね おつころーん (本人へのリプライ)

白上フブキ おつ🌽  (本人へのリプライ )

紫咲シオン おつるーん🌙  (本人へのリプライ)少ない

 

などなど、数えだすとキリがない。しかし、これらの挨拶は配信タグを用いての感想ツイートの冒頭や、本人へのリプライという形で使用されることが多く(上記埋め込みから検索に飛んでみるとわかりやすい)、「センキューフォーウォッチン」とは異なるものである。

 配信タグを用いて感想ツイートを行う文化は当然おにぎりゃーにもあり、センキューフォーウォッチンとはまた別に#生おかゆ#めんめんおかゆを用いて感想ツイートをしている。付け加えるならば、「センキューフォーウォッチン」を本人へのリプライに用いることもほとんどない。

 本人へのリプライが少ないことについて、猫又おかゆと紫咲シオンは同じ原因を共有しているように思われる。簡単なことだが、両者とも本人による配信終了後のツイートが少ないのである(本人たちのTwitterを遡ってもらえればわかりやすい)。

 しかし、他のホロメンに目を向けてみるとそれが必ずしも当てはまるわけではないことがわかる。例えば、配信終了時にツイートをあまりしないホロメンにも、日常ツイートなどにおつ○○というリプライが多数送られることがある(大空スバルなどはその代表例だと言える)。

 ツイートの数が少ない原因であっても、それすなわち本人へのリプライにおいて使用されにくい原因というわけではないのである。つまり他の点に原因を求められるわけだが、想像は容易であり、恐らくは「見てくれてありがとう」と本人に言うのは奇怪であるからだろう。

 いずれにせよ、おにぎりゃーは配信が終わるたびに感想ツイートとは別に、「センキューフォーウォッチン」という形で目に見えるアクションを起こしているのである。さらに言うならば、センキューフォーウォッチンは猫又おかゆ本人に届けることを目的としない、ファンコミュニティ内で完結したものである。

 

 ここまで、よくわからないなりにセンキューフォーウォッチン文化の概要を説明してきた。ここからは、センキューフォーウォッチン文化の誕生から今に至るまでの歴史を振り返ってみたい。

 

4.センキューフォーウォッチン略史

センキューフォーウォッチンの生みの親

 そもそも「センキューフォーウォッチン」の元ネタが何かというと、猫又おかゆが過去に配信で使用していたエンディング音声にある。2020年3月21日の配信で製作されたもので、ひたすらセンキューフォーウォッチンがループする、中毒性の高いエンディング音声である。

 例によって2022年8月現在アーカイブは非公開だが、当該配信はこちらの朝活配信のようだ。

【雑談】早起きしたので朝の活【ホロライブ/猫又おかゆ

https://youtu.be/DN1DOQhquG4

 エンディング音声の差し替えに至る経緯については、当該配信の切り抜きが残っていた。かなり軽いノリで製作された「センキューフォーウォッチン」が、このような文化にまで成長したようである。

 こうした経緯でエンディング音声となった「センキューフォーウォッチン」だが、すぐに今のようなセンキューフォーウォッチン文化が形成されたわけではない。

前身:ミンナニモオスソワケダヨー

 少々話題は変わるが、「センキューフォーウォッチン」には前身のエンディング音声があったことも見逃せない。センキューフォーウォッチンではなくミンナニモオスソワケダヨーが繰り返されるもので、こちらは2019年5月14日から使用され、2020年3月21日の配信でセンキューフォーウォッチンに差し替えられるまで使用されていたらしい。

配信におけるセンキューフォーウォッチン

 センキューフォーウォッチン差し替え後で、アーカイブが残っている最古のエンディング付き配信はこちらである。エンディング再生時にはチャット欄にセンキューフォーウォッチンを打ち込む文化があったようで、この点にはミンナニモオスソワケダヨー時代からの連続性が認められる(上下埋め込みアーカイブのチャット欄参照)。

 こちらが最後にセンキューフォーウォッチンのエンディング音声が使用されたアーカイブだが、変わらずチャット欄にセンキューフォーウォッチンが打ち込まれる。

センキューフォーウォッチン文化の形成と拡大

 しかし、現在のようにTwitter上にセンキューフォーウォッチンが増殖するにはもう少しの月日を要した。

 以下、Twitter検索上に表示されるセンキューフォーウォッチンの個数をもとに考察を進めている。すべて手作業と目視で確認したため、多少のミスはご容赦願いたい。また、これらの数字は鍵垢化や削除、シャドウバンされたアカウントの存在によって、本来の数より少なくなっている可能性があることに注意されたい。

実際、2020年7月13日を例にすると、残存するスクリーンショットの情報から少なくとも3つのセンキューフォーウォッチンが表示されていないことを確認している。

 エンディング音声の変更から間もなくして、特定少数が配信終了後にセンキューフォーウォッチンを呟いてはいたようだが、その数は多くて1配信あたり5つ程度であった。そして、2020年6月末まではこのような停滞した状況が続いた。

センキューフォーウォッチン until:2020-03-31 - Twitter Search

センキューフォーウォッチン until:2020-04-30 - Twitter Search

センキューフォーウォッチン until:2020-05-31 - Twitter Search

センキューフォーウォッチン until:2020-06-30 - Twitter Search

 転機とみられるのは2020年7月。この時期から1配信あたり2桁を超えるセンキューフォーウォッチンが呟かれるようになり、28日の配信後には18個ものセンキューフォーウォッチンが確認できた。

センキューフォーウォッチン until:2020-07-31 - Twitter Search

 センキューフォーウォッチン文化が広まり始めた時期は2020年7月と認識して差し支えないと考えるが、実は冒頭で紹介したおにぎりゃー受肉もちょうど同じ時期にあたる。安易に因果関係を認めるのは危険だが、おにぎりゃーが肉体を獲得したことが、ファンコミュニティの活性化をもたらし、センキューフォーウォッチン文化の広まりにまで貢献したかもしれない。たぶん関係ない。

 2020年8月以降について、配信開始・終了時間が特に似通ったものについてピックアップしてセンキューフォーウォッチンの個数を調べてみた。

センキューフォーウォッチンの個数

センキューフォーウォッチンの個数(長時間配信版)

 

 2020年7月以降、センキューフォーウォッチン文化はおにぎりゃーの間に広まっていった。しばらくは緩やかな増加を続けていたが、2020年11月に一気にセンキューフォーウォッチンの数が増加していることがわかる。途中で力尽きたため正確ではないが、感覚として2021年春ごろに増加が止まり、その後は停滞しているように感じた。

5.センキューフォーウォッチンの変化

 「センキューフォーウォッチン」は何もずっと同じ形をしているわけではない。ここ2年ほどの間でも緩やかに変化し続けており、初期と現在の物を比べてみると雰囲気が異なっていることがわかる。

センキューフォーウォッチン()

 センキューフォーウォッチン文化の変化を表す代表的な現象として、()勢力の増大が挙げられるだろう。黎明期の「センキューフォーウォッチン」はあとに何も続けないものが多く、2回行動時であっても「センキューフォーウォッチン!」や「センキューフォーウォッチン2」といった単調なものが使用されていることが多かった。

Twitterでは短期間に同一の内容のツイートをできないため、1日に2回配信があるときなどはセンキューフォーウォッチンに手を加えなければならない。

 しかし、現在では3~4割ほどのものに、センキューフォーウォッチンの後に()を付し、以下のように配信内容や小ネタ、感想などを入れているものが見受けられる。

※2022年8月現在、さらにその割合が増加したように感じる。

センキューフォーウォッチン(3周年おめでとう!)

センキューフォーウォッチン(スバおか)

センキューフォーウォッチン(キャプボくん…)

 検索中の感覚としては2021年上半期から増加したように感じたが、今後暇があればまともに調べてみたい。

どうでもインフォメーション:()は半角派と全角派に分かれており、ブラウザ版Twitterを利用している人に半角派が多いイメージ。

6.センキューフォーウォッチンの派生

 「センキューフォーウォッチン」にはいくつかの派生形があることをご存じだろうか。主にツイートするタイミングが違うことから、

お先にセンキューフォーウォッチン

センキューフォーウォッチン(アーカイブ)

の2種がある。前者は配信から途中で離脱する際、後者は配信をアーカイブで見た際に使用される。後者についてはこの基本形で用いられることはむしろ少ないが、「センキューフォーウォッチンとアーカイブがセットである」もの全体を同一視しておく。

 これらはいつから使用されるようになったのか、同様にTwitterで検索してみる。

お先にセンキューフォーウォッチン

お先にセンキューフォーウォッチン until:2020-12-31 - Twitter Search

 「お先にセンキューフォーウォッチン」(以下「お先に」)に関しては、2020年11月が初出のようだ。また、その後も2020年中は盛んに用いられることはない。

 配信からの途中離脱を示すセンキューフォーウォッチンは他にもいくつかあり、「お先に」の前には「早めのセンキューフォーウォッチン」なども使用されていたようだが、ここでは現在まで使用される「お先に」のみに焦点を当てることとする。

存在を把握しておらず、途中で気づいたので無視せざるを得なくなったのは内緒。

お先に センキューフォーウォッチン until:2021-2-28 - Twitter Search

 「お先に」は2021年に入って増加傾向を示し、2月ごろから特に存在感を増している。この現象について、「お先に」は配信から離脱する際に用いられるものであるため、当然配信時刻が通常とずれるほど、配信時間が長くなるほど増加すると推定できる。

 そこで当該期のアーカイブ一覧を眺めてみると、なるほど配信時間が長めのものが増えてきたと思ってよいと思う(きちんとしたデータを示せと言われれば尤もだが、めんどくさいので勘弁してほしい)。3時間を超えるような配信が珍しくないし、6時間を超えるようないわゆる「耐久配信」に近いものも出てくる。また、(これも私の肌感覚にすぎないが)猫又おかゆの配信開始時刻は22時から前後1時間以内に収まることが多いため、必然的に日を跨ぐような形になる。

 こうしたことを踏まえて「お先に」についてあれこれ考えようとしたが、全く結論が出なかったので紹介程度にとどめておく。

センキューフォーウォッチン(アーカイブ)

 先に「センキューフォーウォッチンとアーカイブがセットである」もの全体を同一視して構わないと述べたが、このままだと厳密には問題が生じる。というのは、センキューフォーウォッチン(アーカイブ見てきます)といった、通常のセンキューフォーウォッチンとタイミングは同じであるが、後にアーカイブで見る意思を示すものが存在するためである。

 よって、ここでの正しいセンキューフォーウォッチン(アーカイブ)の対象は「センキューフォーウォッチンとアーカイブがセットで、後からアーカイブで視聴したことを示すもの」(以下「アーカイブ」とする)である。

センキューフォーウォッチン アーカイブ until:2020-12-31 - Twitter Search

 さて、「アーカイブ」の初見は2020年7月まで遡る。2020年中も一定数のツイートが見られるが、内容としては「アーカイブ」と「後にアーカイブ視聴の意思を示すもの」が半々といったところだろうか。2021年以降については、全体的な傾向を見出すことが難しかった。調査中に新たに得られた知見としては、

・想定以上に「後にアーカイブ視聴の意思を示すもの」が多い

・センキューフォーウォッチン(残りはアーカイブで)のような、「お先に」と同種のものも多数見られた

 という二点があった。後者について、「お先に」との関係を調べてみると面白いかもしれない。

7.エンディング音声「センキューフォーウォッチン」のその後

 このように広まったセンキューフォーウォッチン文化だが、その火付け役ともいうべきセンキューフォーウォッチンのエンディング音声は現在使用されていない。もぐもぐを繰り返すオープニング音声とともに、2020年9月末から10月にかけての引越し休暇明けから使用されなくなった。

 また、センキューフォーウォッチンのエンディング音声が使用されなくなった後も、しばらくはエンディング再生時にセンキューフォーウォッチンのコメントがいくつか見受けられる。

 さらに、2022年8月現在では2021年8月13日の配信から新調されたこちらのエンディングが使用されている。

 こちらのエンディングは唐突に使用されたため、驚いたおにぎりゃーが多かったことも記憶に新しい。書きかけで放置しすぎて新しくなくなってしまった。

 

 さらに、2023年2月22日の生誕祭liveからはOP/EDともに新たなものに差し替えられ、2023年9月現在まで使用されている。

 

8.さいごに

 以上、「センキューフォーウォッチン」について考察を加えてきたが、結局のところ「よくわからん」というのが正直な感想である。また、私自身未来古参であるがゆえに当初の見通しが甘く、完成までに長期間を要することになってしまった。今後の反省としたい。

 

関連リンク

(記事執筆:黒影海老 )